命の尊厳
命の尊厳──その“当たり前”を守るために、私たちは何ができるのか
命は、誰にとっても一度きり。
そして「尊厳」は、その命が“その人らしく”存在していいという権利です。
介護の現場にいると、
「尊厳って何だろう?」
「自分は守れているだろうか?」
と自問自答する瞬間があります。
結論から言えば、尊厳は“特別なこと”ではなく、
その人を一人の人間として扱うこと
この一点につきます。
■ 尊厳は“介護技術の上にあるもの”ではない
介護の世界では、スキルが注目されがちです。
・食事介助が上手い
・移乗が安全にできる
・記録が丁寧
・認知症ケアの知識がある
どれも大切です。
でもその上に“尊厳”が乗っているわけではありません。
尊厳はもっと根底にあって、
「あなたは生きていていい」
「あなたという人間を大切に思っている」
というまなざしそのものです。
■ 人は、できないことが増えても「人としての価値」は減らない
介護が必要になると、
できないことが増えます。
歩けない
食べられない
覚えられない
選べない
決められない
本人が一番つらい。
そして、周囲はつい“できない部分”ばかりに目が向いてしまう。
でも本当に大切なのは、
その人が生きてきた時間・積み重ねてきた人生そのものに敬意を払うこと。
できる・できないではなく、
その人がその人であること
に価値があります。
■ 介護は「人生の最終章を照らす仕事」
介護の現場は、人生の最終章を支える場所です。
人によっては、
「家族より長く一緒に過ごしたのは、あなた(介護職)かもしれないね」
と言われるほど深く関わることがあります。
だからこそ、
・丁寧な声かけ
・その人のペースを守る
・選択肢を奪わない
・プライドを傷つけない
・思い出を共有する
こうした“些細なことの積み重ね”が尊厳を守ります。
介護は体を支える仕事ではありません。
人生を支える仕事です。
■ 「尊厳」を守るために今日からできる小さなこと
尊厳は難しいことではありません。
今日からできる行動だけで守れます。
✅ 名字ではなく、名前で呼ぶ
✅ 「ありがとうございます」を惜しみなく伝える
✅ 話を最後まで聞く
✅ 気持ちを否定しない
✅ 無意識の“急かす言葉”をなくす
✅ 選択肢を必ず提示する
✅ その人のこだわりを尊重する
どれか一つでも、
その人の心に灯をともします。
■ 最後に──“生きてきた軌跡”を尊重する
私たちは介護の中で、
“その人の最後の物語の一行”を一緒に作っているのかもしれません。
だからこそ、
命の価値を忘れずに。
尊厳を何より大切に。
あなたのケアが、
その人の人生をやさしく包み、
未来の誰かを救うきっかけになることもあります。
介護は、
命を支え、尊厳を守る、いちばん尊い仕事です。

2025.11.01
